建前の餅投げ
昨夜家に帰るとカウンターの上に餅がたくさん置いて有った。紅白の二色で、一つづつビニール袋に入り、テープで止めてある。数えると十七個有る。
「これ、どうしたの?」と尋ねると小三の末っ子が、「俺が取ってきた」とこちらを向いて笑顔で言った。自慢げだ。
とりあえず末っ子を風呂に誘い、湯船に浸かりながら詳しく聞いてみた。どうも、隣町の建前で餅投げがあり、そこに参加してきたらしい。
「拾う人は何人ぐらいいたんだ?」
「50人ぐらいかなあ」
「何でお前は餅投げがあることを知っていたんだ?」
「友達のお父さんが大工でその友達が掃除の時間に内緒で教えてくれた」
生情報か、いい友達がいるなあ、と思いながらもさらに尋ねる。
「お前は結構拾えた方か?」
「いや、おばあさん達の力にはかなわない」
そりゃそうだろう。彼女たちとお前では鍛え方も意気込みも違う。
さらに話を聞くと、野球のグローブをはめている人や、釣りのタモを構えている人までいたらしい。俺が餅投げ係りなら、そこに餅が行かないように細心の注意を払うだろう。
餅はつきたてで柔らかい。さっそく焼いて海苔と醤油とバターで食べる。子供たちはきな粉餅。
末っ子よ、よくやった、また頼むな。