自転車



今度中学生になる長男の通学用に、新しい自転車を買う。27インチのALBELT。自転車屋さんではなく、近所の行きつけのタイヤ屋、ブリジストンショップで購入。嫁さんと長男で自転車を引き取りにいったとき、近いのでてっきり乗って帰ると思っていたら、長男はノアに積んでくれと嫁さんに頼んだそうだ。嫁さんはしかたなく後部座席をフラットにして積んで帰って来たらしい。

考えてみれば長男は少し大きくなる毎に自転車を買い与えていた。小さくなった自転車は次女と末っ子が順にお下がりで使わせたのだ。彼にとってもう何台目の自転車なんだろう。なので特別な感慨はないのだろう。次の日もその次の日も自転車に乗る気配もない。スポーツタイプでもMTBでもなく通学車だもんな。そんなものなのだろう。

一言長男に言っておく。

これでお前の自転車を買うのは終わりだ。後は自分で買いなさい。

30年程前の事だが、中学になる少し前、初めてスポーツタイプの自転車を買ってもらった時の事を思い出す。自転車は土曜日に軽トラックで届けられた。その日はさっそく日が暮れるまで乗り回し、次の日曜日も朝早起きして一日中自転車に触っていた。その二日間のことははっきりと覚えている。自転車の価格自体も今よりも高かったはずだ。その頃の家計から考えると、相当に高価な物だった。

一日中、自転車のスイッチを意味なくいじくり回し、ライトを点け、わけもなく変速し、坂を登り、下っていた。いつもは出かけないような隣町まで走って行ったものだ。疲れたら自転車のスタンドを掛け、サドルの上で休んだり、ちょっと遠くから愛車を眺めたりしていた。友達に会った時、新品の自転車を冷やかされるのが恥ずかしかった。

でも、中三の時にその自転車は盗まれ、結局出てこなかった。両親に無理して買ったもらったあの自転車を私は大切にしたと言えるのだろうか?